はもう見放した女だ、何を言って来ようとも、わしがところへは持ち込むなと申してあるのに」
「それは承知いたしておりますが、今度のお手紙の要件は、どうしても、わたくし一個では計らい兼ねます、ぜひとも、旦那様のお耳にお入れ申した上でございませんと」
「生死《いきしに》のほかには言ってもらわないがよい、あれはあれだけのことになって、身上も分離してお前にあずけてある、お前の方で取計らいきれないということはあるまいが」
「それがでございます――万事は、わたくしがお計らい申して参りましたが、今度のお手紙の要件ばっかりは、どうしても計らいきれませぬ、と申しますのは、このお嬢様のお手紙でございますが、一応お目通しごらんくださいませ」
「見ないでもいいよ、ではとにかく、その要領だけを聞いてみましょう」
「では、このお手紙の要領をお話し申し上げますと……」
太平は、伊太夫に近く少しにじり[#「にじり」に傍点]寄って、ふし目になって手紙を見つめながら、次のように語り出しました。
「あのお嬢様のこのお手紙の要領と申しますのは、自分は今度、近江の国の胆吹山の麓へ地所を買ってそこへ屋敷を営むことになったから、その
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