が、
「猿ウは山へ逃がいとう[#「とう」に傍点]」
と答えると、与次郎は、
「ほんじゃア直《じ》きに行って俺《おれ》ンめっけて来る」
と言って、直ぐ山へ駈け登り、方々を探したが、なんぼめっけても手白がいはしん[#「しん」に傍点]ので、仕方なく家に帰り、
「まず、おしゅんのおトブラいでもしず」
と言って、見ると、そこに寝かして置いたはずのおしゅんの死骸がない。
「はて、変なこともあればあるもんだ」
と、そこいら中を探してみたが、どこにもめっかさらん[#「めっかさらん」に傍点]。
 さすがの与次郎も、これにはびっくりして、やがて、じっとうつむいて、
「俺ン、今まで、鳥獣《とりけだもの》の命を、あんまり取ったその罰が、今日という今日は報いて来て、おしゅんの死骸まで無くンなっとう[#「とう」に傍点]に違いない、俺アハイ、今日限り殺生《せっしょう》は止めにしる[#「しる」に傍点]」
 そう言って与次郎は、鉄砲をへし[#「へし」に傍点]折って近所の不動様へ納め、さて言うことに、
「俺アこれから六部《ろくぶ》になって、今までに命を取った鳥けだものや、おしゅんの後生《ごしょう》をとぶらいながら、日本国
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