また番をしてくりょな」
と言い置き、ちょっとの間だからと思って、近所の川へ洗い物をユス[#「ユス」に傍点]ぎに出かけた。
その後で、手白は早速母親のするのを真似《まね》て、柄杓《ひしゃく》で釜からチンチン煮えている湯を汲んで来て、おしゅんの頭からザーッと二度も三度もかけてやったからたまらない、おしゅんはキッキッと泣いて、そのまま赤くただれて焼け死んでしまった。
川から帰って来た母親は、あまりの驚きに泣くにも泣かれず、
「手白、汝《われ》ぁ困りもんのことをしてくれたなあ、いまにお父《とっ》さんが帰って来《こ》らば、どんないによまアれる[#「よまアれる」に傍点](叱られる)か知れんから、さアちゃっと[#「ちゃっと」に傍点]山へ逃げろ」
と、急いで子猿を山へ逃がしてやった。
やがて与次郎が山から帰って来たので、女房が、
「今日は本当に申しわけァないことをしとう[#「とう」に傍点]、手白の奴ン飛んだことをしでかいて[#「しでかいて」に傍点]しまって」
と言ってありのままを話すと、与次郎はカッと怒って、
「猿はドコへ行っとる[#「とる」に傍点]、あいつをも生かいちゃアおけん」
と言う。女房
前へ
次へ
全439ページ中405ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング