のシルクより洋人の間に大持てなんでげしてな、マダム・シルクでホテルの中が、日も夜も明けない始末でげす……」
「馬鹿!」
 神尾主膳は場所柄をもわきまえず、金助あらためびた[#「びた」に傍点]公をなぐりつけようとして、危なく手元を食いとめました。その時に、左の方からお絹が口を出して、
「殿様、お食事が済みましたらば、マネージャのタウンさんに御紹介を致しますから、お会いくださいませね。それから、望楼に参って遠眼鏡をごらんくださいましね。亜米利加《アメリカ》の先まで見透しというのは嘘でございますけれど、上総房州あたりまでは、ほんとに蟻の這《は》うまで見えようというものでございます――それから、今晩はぜひ一晩、ここにお泊りなすっていらっしゃい」
「いやだ」
「そんなことをおっしゃらずに、何も見学の一つじゃございませんか、西洋のホテルの泊り心地はまた格別なものでございますよ」
「お前は、その経験があるのか」
「いやですよ、殿様、そんな大きな声をなすって……」
 そのうちに食事は済んで、食堂が閉されることになって、ぞろぞろ引上げる。神尾もそれにつづいてその席を立たなければならない段取りになりました
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