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七十六
ああして、与八の私塾はようやく盛んになって行きます。
塾長たる与八は、自家の彫刻もやり、子弟の教育もやり、医術をも施したが、今度は偶像としてあがめらるるに立至りました。
与八の私塾には、塾長先生の講話のほかに、近村の古老を迎えての課外講話がありました。近村の古老篤行家を迎えて、次第次第に殖えてゆく子供たちのために、無邪気なる古伝説や、或いは実験の物語などをしてもらって、衆を教育すると共に、自分も教えられるところが多くありました。無雑作な昔話にしても、土地に居つきの人そのままから、土地の音声を以て話してもらうと、古朴の味わい津々《しんしん》たるものがあって、人をよろこばせること多大なものがあるのです。
今日の課外講師というのは、一色村の土橋くらさんというお婆さんでありました。この春、七十七のお祝いをしたという達者なお婆さんに、お孫さんの里木さんというがついて来て、与八さんの塾の子供たちに昔話をしてくれました。その話は――
昔、相吾《さまご》の与次郎という法外鉄砲をブツことの上手なかりうど[#「かりうど」に傍点]があった。
その近所に大猿が現わ
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