、はらもある、なかなかの奴でな。その弟子の由利という奴にまた腕がある。これは越前一国のことじゃない、応用すれば日本全国にひろがる利用厚生の道なのだ。我々とても資金さえあれば、そのくらいのことはなし兼ねないが、何をいうにも越前ほど自由が利《き》かなかったのが、幸い今度はひとつ……」
 こういう会話を神尾が聞いていると、またムラムラと癇癪が起りました。武士のくせに町人の向うを張って、毛唐を相手に何百万両もうけたとて何になる!
 だが、おれは天下の直参《じきさん》であるのに、いつもピーピーで、三両五両の小遣《こづかい》にも困らされがちなのに、七万両だの、二十五万ドルだの、百万両だのと、金銀を土瓦のように舌頭であしらっている。癪にさわる奴等だ。もうそんな話は聞いてやらねえぞ!
 神尾がこうむつ[#「むつ」に傍点]かり出して、ひとりじりじりしている時、自分の席の左の方から、軽く風が起って、さっと自分の身体に触れるものがありましたので、思わずそちらを振向くと、神尾が、全く別な感じで、呆《あき》れ返り、且つ、驚き入らざるを得ないものがありました。

         七十五

 神尾が驚き呆れたのは
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