屋も、座敷も、みんな蚕室になってしまうのじゃ。竹刀《しない》だこ[#「だこ」に傍点]のある手で桑の葉を刻み、巻藁《まきわら》をほぐして、まぶしを作ろうという騒ぎだ。それで首尾よく繭《まゆ》が取れ上ると、それを藩の手でとりまとめて宰領し、長崎へ持って行って和蘭《オランダ》商館へ二十五万ドルで何の苦もなく取引を済まして帰って来たという豪勢さだ」
「なるほど――越前様のお倉元は大へんに宜しいと承りましたが、左様な抜け目のないお取引がおありでしたかな」
「あっちの金で二十五万ドルだから、こっちの両にすると一ドルが四両、都合百万両ばかり一夏に儲けてしまった。そうしてな、その百万両を、すっかり一分金に両替をして国もとまで運ぶという段になったのだが、それがまた一仕事でな、長崎奉行に届け出て、お金荷物の先触れを頼み、一駄に千両箱を二つずつ積んで、五百駄近くの大した行列が、長崎から越前まで乗込んだものだ」
「いや、恐れ入りました、銭五もはだし[#「はだし」に傍点]でございます、越前様には、すばらしいお目ききがいらっしゃいますな」
「左様、肥後の熊本から来た横井小楠《よこいしょうなん》という奴が、頭もあり
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