となる――それに越したことはないと考えて、夫との間に二人の子供まであるのに、その若い番頭に色気を見せて、手なずけにとりかかりました。色気を見せたといううちに、まだ不義を許したわけでもなんでもないが、落ちるような風情《ふぜい》を見せて、番頭に気を持たせながら、引っかけて行ったものに違いありません。
「ねえ、わたしも、旦那がああして商売に精出して下さるから有難いことは有難いが、どうも商売にばかり凝《こ》って、家のことを心配して下さいません、わたしというものも、子供というものも、あってないようなものなのです。本来、情というものが乏しい人なんだから、わたしもそれを思うと心細い。そうして、ああいうように、絶えず旅から旅を廻っているうちに、もしかして、よその女にでも情をうつすようなことになっては、わたしたちの身の上はどうなるかわかったものではありません。それを思うと全く、わたしは二人の子供をかかえて路頭に迷わなければならないようになるにきまっています。親類も、身よりも、たよりになるものはなし、そうなると、味方としてはお前を頼むよりほかはないから、後生《ごしょう》だからお前はよく旦那様のお守役をする
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