に聞きなされるが、そうかといって語り出すところの物語であり、お伽噺であるところの話の本質は結局、甚《はなは》だめでたいものではないのでありました――
 昔、あるところに旅の商人がありました。
 いつも、若い番頭を一人つれて太物《ふともの》の旅商いに歩き、家には本来相当な財産がある上に、勤勉家でもあり、商売上手でもありなかなか繁昌したものです。
 ところが、留守を預かるそのお内儀《かみ》さんの心の中が穏かでありませんでした。
「うちの主人は、ああして、商売上手に諸国へ出張して儲《もう》けて来るが、あんな若い番頭を連れて歩いたのでは、いつ番頭に誘惑されて色里へでも引込まれ、または旅先で、あだし女をこしらえてはまり込み、売上げも、元も子もないようにされてしまう場合がないとは限らない」
というような思い過ごしと、女の浅はかな心から、これは早くこちらから先手を打って置く方がたしかだと、思案を凝《こ》らしたその思案というのが、やっぱり、女の浅はかに過ぎませんでした。
 これは何しても、あの番頭をこっちのものにして手なずけて置くに限る、そうすれば、旅先で、旦那の目附役にもなり、家へ帰っては自分の味方
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