杯やりたいのだが代物《しろもの》はないか、という意志表示をしました。
自分の身体《からだ》から、この方の気が切れると、陸《おか》へ上ってお皿の水をこぼした河童同様になって、自滅するほかはないという説明をも附け加えると、お雪ちゃんが心得て、本館の方へ行って、不破の関守氏から一樽を頒《わか》ちもらって来て道庵に授けたものですから、そのよろこびといっては容易のものではありません。
すぐさまそれを燗《かん》にしてもらってちびりちびり試むると、その酒の芳醇《ほうじゅん》なこと、こんなところへ来て、こんないい酒を恵まれようとは全く予想外のことでしたから、道庵の魂が頂天に飛びました。
それから、お雪ちゃんという子のこの好意が、ばかに身にしみて嬉しくなると共に、話をすると、頭がよくて理解があり、それに知識慾もあって、相当の受けこたえができる。それに人のもてなしに愛想があって、親切を極めるものですから、道庵が重ねて嬉しくなって、この娘さんのためには、また自分の好意を傾けて、相手になってやらなければならないと考えつつ、しきりに盃と会話とを進めています。
お雪ちゃんの方もまた、この先生が飄逸《ひょう
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