したのだ、お角の方寸で我々をその筋へ密告したのに違えあるめえ――そうだ、道庵は袋の鼠、お角こそ大伴《おおとも》の黒主《くろぬし》、あいつが万事糸をひいている」
そこで、この一まきは、釈放されるや否や、血眼で大津方面へ飛んで返り、お角の根拠をついたが、そのお角は一足先に遊山舟であの通り、湖面遥かに浮んでしまった。そこでこちらは岸に立って足ずり――という段取りであったことがあとでわかりました。
しかし、この連中、一度は足ずりをして残念がったけれども、やがて談合が調《ととの》うと、二はいの船を買い切って船装いをすると共に、これに分乗して、あわただしく湖中へ向けて乗り出したのは、果してお角の船を追いかけるつもりか、或いはなお身辺の危険を慮《おもんぱか》って避難するつもりか、その挙動だけを以てしては、真意のほどはわかりませんでした。
五十四
胆吹の上平館《かみひらやかた》の出丸では、道庵先生と、お雪ちゃんとが、たちまち打ちとけてしまいました。
道庵は、お雪ちゃんを前にして炉辺に坐り込むと、忽《たちま》ち左の手を口のあたりへ持って行って、妙な手つきをして、とりあえず一
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