もし食べ過ぎて腹痛みなど仕らば、鳥井本の神教丸……」
 くだらないことをのべつに喋《しゃべ》り立てながら、酒を飲み、肴を数えたてる。お角さんもそれを興あることに思い、それから、
「さあ、舞子さんたち、陽気に一つ踊って下さい」
 芸子、舞子が、やがて三味線、太鼓にとりかかると、今法界坊が、
「さらば愚僧が一差《ひとさし》舞うてごらんに供えようずるにて候」
 いちいち謡曲まがいのせりふで、がっそう頭に鉢巻をすると、いまにも浮かれて踊り足を踏み出そうとする気構え、こいつも相当に茶人だと一座も興に入りました。
 そうして舟は湖面を辷《すべ》り出して、瀬田、石山の方へと進み行くのであります。

         五十三

 こうしてお角の遊山舟が、さんざめかして湖上遥かに乗り出した時分に、あわただしくその舟着へ押しかけた一団の者がありました。
 その連中を見ると、野侍《のざむらい》のようなものもあり、安直な長脇差もあれば、三下のぶしょく[#「ぶしょく」に傍点]渡世もあり――相撲上《すもうあが》りもあり、三ぴんもあり、いずれも血眼《ちまなこ》になってここへなだれ込んで、そうして、
「どうした、お角
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