話をして下さいな。名所案内ばかりじゃありません、何でもいいから、この土地にありきたりの話をして聞かせて下さいな。さあ、遠慮なくおやり。舞子さん、あの和尚さんにお酌《しゃく》をしてあげてちょうだい」
と言って、今法界坊にお角はまず酒と肴《さかな》を振舞うと、法界坊、いたく恐悦して盃を押戴き、一口しめして、肴をつまみ、
「ああら珍しや酒は伊丹《いたみ》の上酒、肴は鮒《ふな》のあま煮、こなたなるはぎぎ[#「ぎぎ」に傍点]の味噌汁、こなたなるは瀬田のしじみ汁、まった、これなるは源五郎鮒のこつきなます、あれなるはひがいもろこ[#「ひがいもろこ」に傍点]の素焼の二杯酢、これなるは小香魚《こあゆ》のせごし、香魚の飴《あめ》だき、いさざ[#「いさざ」に傍点]の豆煮と見たはひがめか、かく取揃えし山海の珍味、百味の飲食《おんじき》、これをたらふく鼻の下、くうでんの建立《こんりゅう》に納め奉れば、やがて渋いところで政所《まんどころ》のお茶を一服いただき、お茶うけには甘いところで磨針峠《すりはりとうげ》のあん餅、多賀の糸切餅、草津の姥《うば》ヶ餅《もち》、これらをばお茶うけとしてよばれ候上は右と左の分け使い、
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