れのことに御座あり候」
「うるせえな、親方――」
と、お角の方を庄公が向き直って、
「親方、お聞きなさる通り、へんてこな奴がやって来ました、あの法界坊の出来損ねえみたいな奴が、一杯お酒を御馳走になって、五十貰えば名所案内をしてくれるって言いますが、追払っちまいましょうか」
お角がそれを聞いて、
「まあ、いいから呼んでおやりよ、わたしはあんまり故事来歴なんぞ知らないから、聞かしてもらえば学問になるよ、こっちへ呼んでおあげ」
と言いましたから、庄公はまた今法界坊の方へ向き直って、
「おい、法界坊さん、じゃあ案内をおたのみ申すことになるんだそうだから、こっちへお入り」
「これは、忝《かたじ》けのう存ずるにて候」
と言って、のこのこと今法界坊は舟の中へ入って来て、一隅にちょこなんと座を構えました。
そうしているうちに、舟はようやく纜《ともづな》を解いて乗り出す。天気も好いし、景気もいいものですから、お角さんもいい気になって今法界坊を手許《てもと》に差招き、
「和尚さん、さあ、一つあがり。わたしゃ、こちらの方へは今日はじめてで、いっこう何も知りませんから、一杯やりながらいろいろこの土地の世間
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