あつめておりましたわたくしの出生地と申すのは、この近江の国、この土地の生れなのでございます」
「さようでございましたか、そのこともつい存じませぬことで、都の御出生とばかり存じ上げておりました」
「都へ出て、浮川竹《うきかわたけ》に白拍子《しらびょうし》のはかないつとめをいたしておりますうちに、妹の祇女《ぎじょ》とともに、あの入道殿のお見出しにあずかって、寵愛を一身にうけるようになりました」
「入道殿とおっしゃいますのは?」
「それは、あの清盛のことでございます、その時は太政大臣《だいじょうだいじん》の位に登っておりました」
「ああ、よくわかりました」
「その当座というものは、わたくしたちが、天下の女という女の幸福を一人で占めたもののように、世間から、羨《うらや》まれもし、あがめられもいたしました。天下を掌《たなごころ》のうちに握る太政入道は、たとい王侯将相のお言葉はお用いなくとも、わたくしたちの願いはみんな聞いて下さいました。御一門の方さえ憚《はばか》っておりまする時に、わたくしたちは思い切って甘えもいたし、我儘《わがまま》もいたして許されました。それほどでございますから、月卿雲客、名
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