聞過しにするに忍びないのでございまして」
「異《い》なことをおっしゃいます、それは不祥なお言葉でございます」
「せっかくの御子息の門出に、ケチをつけるというつもりは毛頭ございません、身につまされましたものでございますから――つまり、わたくしというものが、その出世にあやまられた一つの見せしめなんでございまして」
「いったい、あなた様はどなたでいらっしゃいますか」
 賢母は、美人の言い廻しの奇怪なるに、ついその身の上の素姓《すじょう》を問いたださざるを得ない気持にさせられたようです。
 そうすると、美人はそれに答えないで、おもむろに横の方を向きながら、物々しい声で朗詠のような調子をはじめました。男性を思わせるくらいの朗々たる音吐《おんと》でしたが、その調子の綴りを聞いていると、まさに一首の歌です。
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萌《も》え出づるも、枯るるも、同じ野辺の草
 いづれか、秋に、逢はで、果つべき
[#ここで字下げ終わり]

         四十五

 その時、賢母はいささか手持無沙汰に見えました。歌を以て答えられたけれど、自分には歌をもってこれに応ずる素養が欠けていることを恥づるとし
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