ては、甚《はなは》だ不躾《ぶしつけ》でございますが、わたくしの考えだけを申し上げますと、それはおやめになった方がおためかと考えますのでございますが……」
「何と仰せになりましたか」
「はい、御子息様を御親類の方へお連れあそばして出世をおさせ申すことは、おやめになった方がおよろしくはございませんかと、わたくしはさように申し上げたのでございます」
「では、わたくしたちが長浜へ参るのは、悪いとの仰せでございますか」
「その通りでございます、御子息様をお連戻しになって、尾張の中村へお帰りになるのが、あなた様方のおためかと存じまして」
「それはいったい、どういうわけでございましょう」
「まあ、お聞きあそばせ」
 水門に腰かけている美人は、提灯《ちょうちん》を提げていささか立ち煩《わずら》っている賢母に向って、あらためて物語をはじめました、
「わたくしは、出世をすることが必ずしも人の幸福《しあわせ》ではないと覚えておりまする、幸福でないのみならず、出世をするのは、人間の最も大きな不幸と災禍《わざわい》の門を入るものと覚らずにはおられないのでございます、それ故に、あなた様方の、只今のお話を、ここでお
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