しょう。これが十歳の時でござりました、家へ盗賊が入りましてな、わたくしも内心はゾッといたしました。許しては置けないが、母子が怪我をしても、させてもならない、どうしようかと思案しておりますうちに、これがずかずかと立って何をいたすかと見ますと、村のお祭礼《まつり》の時に用いまする鬼の面が家にござりました、それを手にとると自分の面へこういうふうにかぶりまして、そうしてそのまま盗賊の前へ向って行ったのでござります。不意を打たれて驚いたのは盗賊でございました、鬼の面とは知らず、眼前に異形のものが現われ出でたものでございますから度を失って、たじたじといたしましたところを、この子が一刀に斬って捨ててしまいました」
「ははあ、それはいよいよ凡人には及び難い」
「そういう気象の子供でございますから、どのみち、これは草深いところに置くよりも、武士として出世させるのが道だと思いまして、幸いにこの長浜に親戚の藤吉郎がおりますものでございますから……」
「どうです、その藤吉郎殿には、この子が育て切れますかな」
「それはもう、そう申しては、これまた親類自慢とお笑いになるでしょうが、あの藤吉郎がまた決して凡物ではご
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