四十三

 その話しながら来る場所が、こちらの突立っている覆面の人に、追々近く迫って来るのです。
 こちらでは、その人の話し声も、提灯の光も、それがだんだん近寄って来ることも、先刻御承知のはずなんだが、あちらでは、ここにこの人のいることを想像だもしていないことは確かです。よし、鼻を突き合わすようなところまで近づいて来たとしたところが、闇の空気の中に、この通り覆面の異装で立っていられては、気のつくはずはないのです。こういう場合にこそ、あの先刻のセント・エルモス・ファイアーが気を利《き》かして燃え出してくれればいいのに。
 こちらは先刻承知の上だからいいけれども、先方がかわいそうです。こう飄々《ひょうひょう》と近づいて来て、提灯を持っていることだから、鉢合せまでにもなるまいけれど、まかり間違って、あの長いものの鞘《さや》にでも触《さわ》ろうものなら、いや鞘に触らないまでも、提灯の光のとどく距離にまで引寄せられて来て、ハッと気がついたのではもう遅い。
 こういう場合には、こちらに好意があらば、空咳《からせき》をするとか、生あくびをするとかなんとかして、相当、先方に予備認識を与えて、他
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