の村で使用し、夕方の何時からは乙の村へ放流するというようなことにでも、相談ずくでやってみちゃどうだ――いくら君たちが竹槍蓆旗《ちくそうせっき》で騒いでみたところで、この水量が一滴でも増加すべき筋合いのものではない。そこで双方委員を選んで、おたがいに歩み合いをいたし、相当限度まで辛抱すべきところは辛抱するという手段を執るのが賢い。そうして、その余力を以て、両方の村々が仲よく相一致して、雨乞踊《あまごいおど》りでも催して、天に祈り、人を喜ばしてみちゃどうだ、そのうちには何か効験がないということもあるまい」
右のような理解を説いて聞かせているとする、そうすると両岸のいきり立った、逸《はや》り男《お》もそれに感化されて、
「なるほど、旦那のおっしゃることは尤《もっと》もだ、お天道様が雨をふらせて下さらねえからといって、人間が血を流すのは、よくねえことだ、なんとか総代を選んで談合がぶてるものなら、そりゃはあ、談合をぶつに越したこたあねえ」
というような空気に傾いたらしい。そこを右のさむらいが、
「では、ともかく総代は君たちの方でおのおの五人なり十人なり、適当に選挙し給え、仲裁役は不肖ながら拙
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