通しな」
「連れて来てようごんすか」
「遠慮は要らねえ、友達かエ」
「いや、わっしの川柳の師匠でごんす」
「おや、川柳の師匠、てめえ洒落《しゃれ》たものを連れて歩いてやがるんだな」
「師匠は江戸ッ子でごんす」
「なに、江戸ッ子!」
「およそ大名旗本の奥向より川柳、雑俳、岡場所、地獄、極楽、夜鷹、折助の故事来歴、わしが師匠の知らねえことはねえという、江戸一の通人でごんす」
「そいつぁ、耳寄りだ」
「天から降ったか、地から湧いたか」
「丁馬親分――安直兄い、およろこびなせえ」
「何はともあれ、その江戸ッ子の大通先生を、片時《へんじ》も早くこの場へ……」
「合点《がってん》でごんす」
 暫くあって、ひょろひょろとこの場へ連れて来られた一人の通人がありました。見受けるところ年の頃は道庵とほぼ近いし、気のせいか背恰好《せいかっこう》もあれに似たところがある。それを見ると木口親分もグッと気を入れたが、安直が思わず膝を進ませ、
「あんたはん、ほんまに江戸ッ子でおまっしゃろ」
 まかり出た通人がグッと反身《そりみ》になって、
「わっしゃあ、よた村とんび[#「よた村とんび」に傍点]という江戸ッ子でげす、
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