か》んで吐き出したくなるほどの、いやな声なのですが、しかし、それは感情の問題で、事実上、一人の人間が、この石垣の下あたりの地点まで、のたりついて、進退|谷《きわ》まって助けを呼んでいることは間違いないのですから、その声の生ぬるさの故を以て、その人の生命《いのち》を見殺しにするわけにはゆかないのです。
「ちぇッ――意気地のねえ野郎だな」
内に向って怒号しきった米友が、外に向って噛んで棄てるような声。
「待ってろ、いま行って見てやるから」
寸の足りない不動は濛々《もうもう》たる火焔を抱いて、転がるようにまたも外へ飛び出してしまいました。
そうして、松の大木の根方のところから、三浦之助が安達藤三を呼び出すような恰好《かっこう》をして、そうして石垣の下を見下ろし、
「いってえ、どうしたと言うんだい、この夜中に、こんなところへのたりついて、人騒がせをやりゃあがって」
と叱りつけました。
「済まねえ――夜中にお騒がせ申して、ほんとに申しわけはねえと思うが、なにぶん、後ろには大敵、ところは名にし負うおろち[#「おろち」に傍点]の棲《す》む胆吹山――日本武尊《やまとたけるのみこと》でさえお迷いに
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