る声なのですから、わざわざ好奇《ものずき》に、こんなところまで、こんなだらしのない絶叫を試みに来る奴があろうはずはないのです。
では、狐か、狸か――しかし、今時の狐や狸は、もっと気の利《き》いた声色を使う。いったい何者だ!
たとい生温いとはいえ、だらしがないとはいえ、歯切れが悪いとはいえ、その音色に危急存亡の声明とはハッキリとしていて、またその響き来《きた》った方角というのも、この館《やかた》の出丸の直下、石垣が高く塁を成して積み上げられている根元から起って来たのはたしかなので――それ、また続いて聞える、
「誰かいねえのかね、男一匹が、ここで生きるか死ぬかの境なんだから、どうか助けておくんなさい、この上の火の光をたよりにここまでこうやって、のたりついたところなんでげすから――どなたか起きて、ひとつ助けておくんなさい、後ろには大敵を控え、前には絶壁、全く以て、男一匹が生きるか死ぬかの境なんでげすから――」
続けざまに起る救助を求むるの声、なんてまた生温《なまぬる》さだろう、男一匹が生きるか死ぬかの際に、こういう声を出すくらいなら、黙って死んでしまった方がいい。勝手にしやがれと、噛《
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