たりなんぞして、さて家の中へ舞い戻ろうとした途端の鼻をギョッと白まされたあの剃刀使い、要するに、あの戸口の戸を、もう一度また内からがらりとあけて、そうして、米友が身構え充分に、やにわに広庭へと躍《おど》り出した途端、果して鉢合せ――
「友さん」
「お前《めえ》」
果然、そこで鉢合せが起ってしまいました。しかも、鉢合せをした当人よりも、合わされた米友公が、またしても泡を食わされてしまったのは、返す返すも今晩は、米友の売れない晩であるらしい。
「友さん」と言って、出合頭にそこに立っていたのは即ち、最初から米友が咎《とが》めきっていた怪しい物影、人間であるには相違ないが、その家の周囲をうろつき、軒下を走り、或いは塀の下に彳《たたず》んで、ためつすがめつしていたことらしい証跡の充分にある、その怪しい奴から先《せん》を取られて声をかけられてしまいました。
そうして、米友が「お前」と言ったきり立ちすくみになったのは、予期したとは全く番狂わせの立合であったからのことで、すなわち、この怪しい人影はお銀様であったのです。そうして、怪しい人影の、怪しいことを睨《にら》んだ点に於てはいささかも誤認はなか
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