した。しかしこの家の構えに於ては、表も裏も、そう近い距離では、米友の身体《からだ》で一っ飛びに飛びさえすれば、裏は直ちに表になり、表は直ちに裏返すことができるのですから始末はいいのです。それと、なお都合のよいことは、ただいま確認したその怪しい者の人影――たしかに人間の影法師には相違ないが、それが何者であって、何しに来たかということまでは確認していないのですが、それが人間の物影であることだけは確実に認めたし、苟《いやしく》も人間の物影である以上、深夜この辺の、しかも我々の新たに移り住んでいることを知らないはずのない怪しい奴が忍び寄っていると、こう断定しないわけにはゆきません――その怪しい奴も、やっぱり軒を南へ廻り込んだのだから、当然、自分が履物を求めようとする裏口の方へと姿を移したのです。してみると、自分が表口へ飛びうつって、履物を突っかけてあちらから外へ飛び出すと、かえって幸いに、その怪しい奴と鉢合せをするかも知れない――得たり賢しと米友が、その通り実行を試みました。
前庭の方、すなわち、鷲《わし》の子を解放して親鷲を喜ばせてやったり、その揚句、いい気持になって川中島の二の舞に陶酔し
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