、むやみに頭の中に群がって来てみたり、また、それが急に遁逃《とんとう》して空虚にされてしまったりする場合に、どこへ的を置いて矢を放っていいかわからないから、そこで突発的に、「ばかにしてやがら」――
今もただ、そんなようなきっかけで、「ばかにしてやがら」と鼻の先で言い捨てて、その途端に、手にしていた例の杖槍の一端を取ると、それをグルリと半径にブン廻しました。
杖槍を半径にブン廻してみると、自分の胸の筋肉が、かあんと鳴りました。
その筋肉の震動が、なんとなく米友に、一味の快感を与えたと見られます。それから即座に立ち直って、今度は頭の上へ持って来てブン廻して、見事に全円を描いてしまいました。
二十六
米友の自己陶酔の幕はそれから始まりました。
甲府城下の霧の如法闇夜《にょほうあんや》に演出した一人芝居は、あれは生命《いのち》がけの剣刃上のことでしたから、前例にはなりません。信州川中島の月の夜にこそ、一度この米友の自己陶酔を見かけたことがあるのであります。
今宵、たった今、米友は棒を振り廻してみることに、我ながら絶えて久しい自己快感を覚えました。それから、松の
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