友はついに、籠を戸外の縁側へ押し出してしまいました。取縋《とりすが》ってみたところで、お雪ちゃんの力では、米友の地力を如何《いかん》ともすることができません――だが、目に見えないあの暴君タイプのお嬢様の圧力が、この時も、うしろからひしひしとお雪ちゃんの背中に迫るように感ずるのに、米友は一向その辺になんらの気兼ねを持たないらしい。事実、今の世に、お銀様を恐れない人は、この男一人かも知れません。あの暴女王をつかまえて、目の前でポンポン争い得るものは、まずお雪ちゃんの知れる限りでは、この米友さんのほかにはないらしい。そうして、多くの人が、腫物《はれもの》にさわるように、あしらい兼ねている前で、つけつけと物を言って、自分も更に憚《はばか》るところはないし、第一、当の暴女王その人が、黙ってこれを聞き流しているのみか、烈しく当られて、かえって暴女王が面《かお》をそむけて、米友の鉾先《ほこさき》を避けようとすることさえあるのを見受けるのです。
米友はついに、後ろへ向けた籠の戸を充分にあけ払ってやると、はばたきをして、丸くなって、外の闇へ躍《おど》り出してしまった鷲の子。
その途端に、さわがしい羽
前へ
次へ
全439ページ中129ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング