返してやるのが人情だあな」
と米友が答えました。
「それはそうかも知れませんが、友さん、お前が預かったんじゃない、わたしが、お嬢様から頼まれて引受けたのですから、逃がしてしまっては、わたしが叱られるじゃあないの、わたしが申しわけがないじゃありませんか」
「だからいいよ、罪をおいらがきるからいいよ、申しわけなら、おいらがしてやらあな、叱られるなら、おいらが叱られてやらあ。いったい、お嬢様お嬢様って、あの女に、みんながお代官ででもあるように恐れ入ってしまってるのが、おいらにはわからねえ、お嬢様であろうと、お代官であろうと、道理と人情に二つはねえ」
と米友が答えました。
「そりゃ米友さん、お前だけに通る理窟で、どっちにしても困るのは、わたしよ」
「おいらだけに通る理窟なら、世間一般に通らなけりゃならねえんだ、おいらは、まだ世間に通らねえ理窟を言った覚えはねえ」
と、米友がお雪ちゃんのためにたんかをきって、自分の信ずるままを強行しようとしますとお雪ちゃんは、ちょっと当惑をして、
「それはそうですけれども――」
「おいらが罪をきるからいいよ、お嬢様なんて、そんなに怖《こわ》い女じゃねえよ」
 米
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