した。
 決然として立ち上ると共に、猛然として、籠の上ののし[#「のし」に傍点]板を取払ったと見ると、その籠を力にまかせて、肩の上までかつぎ上げましたからお雪ちゃんが、
「友さん、どうするの」
「仕方がねえから……」
と言って米友は、雨戸の際まで子鷲《こわし》の入った籠をかつぎ出して、そこで、片手でもって心張棒《しんばりぼう》を取外《とりはず》し、鍵を上げて、カラリと戸を押開いたものですから、お雪ちゃんが、
「友さん、それを逃がしちまってはいけません」
「だッて……」
と米友は少しどもりながら、籠の戸を表の方に押向けると、その手は早くも水門口を開くように、籠の戸を引き上げにかかったものですから、またもお雪ちゃんが、
「友さん、逃がしちゃいけません、逃がしては、わたしが申しわけがないじゃありませんか、お嬢様に叱られるじゃありませんか」
「だってお前、子供を親許へ返してやるんだから、理窟はこっちにあらあな。もともと、親の子を、こっちが横取りしたのが悪いんだあな。慰みがてら、親の留守をねらって取っつかまえて来た子鷲なんだろう、だから、考えてみると、こいつをこっちへ置くのが道理に外れたことで、
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