絶叫を、全く沈黙して聞くだけでは、聞く方がやりきれたものでない。
「叱《し》ッ、叱《し》ッ、こん畜生」
と罵《ののし》りながら、じだんだを五たびも六たびも踏みましたけれども、結局、出て行って追い払おうとするでもなし、咽喉笛《のどぶえ》を抑えつけて鳴かせまいとするでもない。
「困りましたねえ」
お雪ちゃんは、敷きかけた蒲団《ふとん》を吹流しのように持ったまま、天を仰ぎ、軒をながめて所在に窮している。
米友はついに、せっかく手にした杖槍を投げ出して、炉辺へ来てどっかと小さな胡坐《あぐら》をかいてしまいました。お雪ちゃんが敷きかけた蒲団を抛《ほう》り出して、
「あれ、また、あんなに鷲の子が荒《あば》れ出しました、籠をこわしてしまやしないかしら、友さん、どうかして頂戴、籠をこわして飛び出されては大変ですから」
「待ちな」
と言って、いったん炉辺へ坐りこんでみた米友はまた立ち上って、その鷲の子の猛然たるはばたきのする納戸《なんど》の方へ行こうとすると、お雪ちゃんが、早くもその新しい調度の一つなる行燈《あんどん》をつり下げて、米友の先に立ちました。米友のために案内して、鷲の子を預かっている次の
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