だんだを踏みました。
この場合、さすがの二人も、上と下とで、かけ合わせる鳥類の猛絶叫のために、完全に圧倒せしめられたようなものです。
その結果、二人とも全くの沈黙に陥れられてしまいました。だが上と下との鳥類は、単に一方が一方に弥次《やじ》り勝って、一方を沈黙させれば、それで勝利の満足の快感に酔うというスポーツ的興味のために喚《わめ》いているのではないのですから、内なる二人が沈黙しようとも、すまいとも、その怒号と喧噪とをやめることではありません。
ただ不思議と思われるのは、高い樹上で怒号している親鷲なるものが、なぜもっと近く、庭上、少なくとも地上まで降りて来ないかということでありました。いかに猛禽《もうきん》が降り立って肉薄して来《きた》っても、戸締りはさいぜんがっしりとしてあるから、室内まで異変を及ぼすということは、万《ばん》ないにきまっているが、ここまで来て、ああして騒ぐ上は、たといくろがねの垣根一枚が破れようとも、破れまいとも、もっと近く肉薄して来なければならないと思われるのに、声の烈しくして切なるわりには、距離が遠くして高過ぎるきらいがある。
しかし、いよいよ加わってくる
前へ
次へ
全439ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング