うわけでもなく、捕われの身の子として、親が戸外まで迎えに来ているということを知ってみれば、居ても立ってもいられないのは、何人といえども見易《みやす》き、これも単純にして深刻なる本能の発動に過ぎないのであります。
しかし――天上天下一切万象が、皆この単純なる本能によって支持されている。
お雪ちゃんも語らず、米友も問わないけれど、この物の道理は、ひしと二人の胸にこたえています。ですから、米友は得意の杖槍は取りは取ったけれども、これを持って外なる親に向うべきか、内なる子を戒《いまし》むべきか――途方に暮れているのもまた、やむを得ないものがある。
「やかましいやい!」
と、米友が思わずじだんだを踏んで、こういって怒鳴りつけてみましたけれど、その悪罵《あくば》には毒を含んでいませんでした。それのみか、その眼に何となしに露を帯びている。
「やかましいやい! いいかげんにしろ、鳥!」
最初は天井を見上げて言ったのだが、次には軒の方に向って叫びました。お雪ちゃんもまた最初から途方にくれて、
「友さん」
「うむ」
「どうしようねえ」
「どうしようったって……やかましいやい、鳥!」
米友が二度、じ
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