いっきゅうそうじゅん》から問答をでもしかけられたような形になり、片足は外へ出して、
「ところで、さしあたり一つ心配なのは、その一揆暴動の崩れが、或いはこの辺へ押寄せて来ないとも限らない、胆吹山《いぶきやま》というところは昔から落人《おちうど》の本場なんだから――そこをひとつ、念のために用心をして置いて下さいよ、一時にそう潮《うしお》の押寄せるようにここまで押寄せて来るはずはなかろうけれども、一人二人、どちらのどんな奴が迷い込んで来ようとも知れぬ、戸締りをよくして置いて下されよ」
こう言い置いて、外の闇の中に身を没しました。
「友さん、よく戸締りをして頂戴」
「大丈夫だ」
「いま関守さんが出て行った入口を、しっかり締めて、錠を下ろして頂戴な」
「なあに、あれはただ用心のために言っただけなんだから」
「でも、用心の上に用心に如《し》くは無しですから、もうすっかり締めてしまいましょうよ」
「じゃ、お前《めえ》の安心のために……」
と言って米友は立ち上って、土間へ下り、関守氏が入って来たところの出入口をぴったりと締めきって、枢《くるる》をカタリとおろしてしまい、
「これで、すっかり締めきりだ
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