噺だ」
「ほんとうに左様でございます、噛《か》みしめればしめるほど、幾つになっても、どんな偉いお方でも、お手本になるお伽噺だと存じます、全くこんな為めになる御本はほかにはございません」
「それに元は西洋の本でも、翻訳がなかなか名文だから、いっそう読み心地がよい。どこまで読みました」
「はい、ここまで拝見しましたが」
と言ってお松は、雁皮紙刷《がんぴしず》りの一種異様な古版本のある頁を開いて、駒井の方へ示しました。
「ははア――」
と駒井が、それに眼を落したところに、次の如き文字が見える。
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「狼と子を持った女のこと」
[#ここで字下げ終わり]
「それから殿様、この少し前のところに、私としても、少し不審なことがございます」
と言って、お松は、十枚ばかり後ろへ紙数を繰り返したところの書物の上を指すと、そこには、
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「父と子どものこと」
[#ここで字下げ終わり]
 駒井が示されたまま黙読すると、次のように書いてある。
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「ある父、子を大勢もったが、その子供の仲が不和で、ややもすれば喧嘩口論をして犇《ひし》めくによって、その父、
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