その時に、船室の一方から唄が流れ出して来ました。
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ネン、ネン、ネン
ネン、ネン、ネンヨ
ネンネのお守はどこへいた
南条おさだへ魚《とと》買いに
チーカロンドン
パツカロンドン
ツアン
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「茂だな、茂太郎歌い出したな、珍妙な子守唄を」
と甚三郎が思い出していると、キャッキャッと言ってよろこぶ男の子の声が続いてしました。これは申すまでもなく登。
そうするとまた、茂太郎の声で、
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ちょうち、ちょうち、ばア
ちょうち、ちょうち、ばア
うつむてんてん、ばア
かいぐり、かいぐり、ばア
ととのめ、ととのめ、ばア
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その度毎にキャッキャッとよろこび笑う登、登を笑わせていよいよはしゃぐ茂太郎。こんどはどうしたのか、登がワーッと泣き出す。
「そら、茂ちゃん、だからいけません、あんまりしつっこいから、とうとうお泣かせ申してしまいました」
と叱るのはばあやの声。
「いいよ、いいよ、お泣かせ申したって、また、あたいが笑わせてあげるから、いいじゃないか。さあ、登さん、ごらん、あたいが踊ってあげるから、ばア」
それ
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