昔話が織り込まれているのであり、何物でも一度|彼奴《きゃつ》の耳に入ったら助かりません――あの踊りだってそうです、無雑作のうちに、どこか節律があるんでしてね。だから、見ていて、なかなか面白いです。つい我々まで、あいつの踊りに釣込まれてしまうのです。黙って見ていてごらんなさい、興が乗り出して来たようですから、何をやり出すか見物《みもの》ですよ、何かの感傷で反芻が引出されると、全く思いがけない離れ業が飛び出すのです。御当人に分っていないのですから――歌う意味が分っていないのは勿論、この次に何が飛び出すかの予測が、歌って踊る御当人にもついていないのですから……」
白雲がこう説明して、この際、玉蕉女史に、暫く鳴りをしずめて、かの童子の出鱈目《でたらめ》に制限を加えないように心づかいを慫慂《しょうよう》していると、
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玉だすき
うねびの山の
かしはらの
ひじりの御代ゆ
あれましし
神のことごと
かたへより
いやつぎつぎに
つがの木の
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「そうら、ごらんなさい――さんさ時雨《しぐれ》が万葉に変りました。この次には、カッポレや隆達が飛び出さないとも限り
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