が金を集めて持って行ったら、地蔵さんが、それを持って早く帰れと言われた。婆はその日から、うんと金持になりました」
「婆さんうまくやったね」
 茂太郎も席の興に乗出して来ました。話そのものの興味もあったでしょうが、老女が聞き馴《な》れない奥州語を調合しての話しぶりが、妙に気に入ったらしい。老女もまた、茂太郎が存外聞き上手なのに張合いが出て――
「そこへ隣の慾タカリ婆がやって来て、あんた、何してそんなに金持になったのっしゃと尋ねた。婆はありのまま、これこれこういうわけで金持になったと教えたら、慾タカリ婆は早速家さ帰って、豆を座敷に転がして、それを地蔵さんの前まで転がして行って、地蔵さん地蔵さん、豆さ転がって来《きい》えんかと尋ねたが、地蔵さんは何とも返事をしないのに、慾タカリ婆は勝手に地蔵さんの膝の上へのぼったり、手のひらへ上ったり、肩の上へのぼったり、頭の上へのぼったりして、とうとう梁の上までのぼった。そこへきのうのように鬼どもがぞろぞろと博奕打ちにやって来た。慾タカリ婆は、コケッコーと鶏の啼く真似を、地蔵さんが指図もしないのに三遍やって鬼どもの前へ下りて行ったら、鬼どもはウンと怒って、
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