で、婆は梁の上までのぼると、地蔵さんが、婆や婆――おれがいいこと教えてやる、いまに鬼どもが、ここさ博奕《ばくち》打ちに来《く》っから、そしたらおれが指図するから、鶏《とり》の啼《な》く真似《まね》をしろ、と言われました」
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ここさ博奕打ち
くっから
くっから
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 茂太郎が頓狂声を出すと、もう慣れきった老女は、かえってそれを合の手のようにして、
「まもなく鬼どもがドヤドヤとやって来て、地蔵さんの前で博奕をはじめた。地蔵さんが合図をしたので、婆は梁の上でコケッコーと鶏の啼く真似をした。そうすると、鬼共は、一番鶏が啼いたから急いでやれと言って、ウンと博奕をやった。地蔵さんがまた指図をしたので、婆は再びコケッコーと鶏の啼く真似をしたら鬼どもは、もう二番鶏だと言いました。地蔵さんが三べん目の指図に婆がコケッコーとやると、鬼どもは、それ三番鶏だから夜が明けたと言って、みんなあわてふためいて金をたくさん置いたまま逃げ出して行った。そしたら地蔵さんが、婆や婆、ここさ下りて来いと言われたので、婆は梁から下りて行くと、そこにある金もって来いと言いつけられた。婆
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