寄せて、なつけてお友達にしてしまうんです、そのくせ、人間に逢っては、ずいぶん臆病なんですけれども、人間のほかのものなら、何でも怖いということを知りませんね、自分が怖がらないから、先方で自然にお友達になって来るのです――うちにいる時も、狼を呼びよせて、しょっちゅうお友達にして、自分の寝る縁の下へ住まわせて、御飯を分けて食べさせていましたが、そのくせ、わたしたちにそれが見つかりゃしないかと、ビクビクしていましたわ。狼よりわたしたちが怖いなんて、ずいぶん変った子でした」
「ほんとうにお雪ちゃんの周囲《まわり》には、変りものばかり集まるんですね」
「つき合ってみれば、ちっとも変っていないんですけれど、聞いてみると、とてもよりつけない人たちのように思われましょう」
「何しろ、その弁信さんと言い、茂ちゃんと言い、人間界の代物《しろもの》ではありませんな……それらを友達としているお雪ちゃん自身も、かなり問題の女ですね」
「そう見えますか知ら」
「見えますとも」
「見えないはずなんですがね、わたしこそ、世間の娘さんと全く同じことよ、心立ては悪かないけれど、そのくせ意気地なしで、自分には何の力もないのに
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