な心持になりました」
 弁信は天の一方を見つめて、じっと考え込んでいましたが、
「さあ、そうなりますと、わたくしはこれからどこへ行ったものでございましょう、十方に道はありとは申せ、わたくしの行くべきところはどこでございましょう、白骨でいけないとすれば、再び甲州の有野村へ帰りましょうか。わたくしが有野村へ帰りましたとて、もうわたくしの為すべき仕事はござりませぬ、伊太夫殿のためにも、お銀様のためにも、わたくしが帰ったことによって、いささかも加えることはできないようになっております。それではいっそ月見寺へ帰りましょうか、あれは白骨谷が空なるよりもなおさらに空なものになっております。さあ、左の方木曾路へ迷い入って、あれをはるばると行けるだけ行ってみましょうか、やがては花の九重の都に至り上ることはわかっておりますが、天子の都も、今は兵馬倥偬《へいばこうそう》の塵に汚れていると聞きました、その戦塵の中へ、かよわいかたわ者のわたくしが参ってみたとて何になりましょう。それならばはるばると摂津の難波、須磨、明石、備前、備中を越えて長門の下の関――赤間ヶ関、悲しい名でございます。寿永の昔にあの赤間ヶ関の浪
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