戸を叩いて、
「御免なさい」
「はい」
そこへ入って来たのは、清澄の茂太郎であります。
茂太郎は、片手には例の般若《はんにゃ》の面を抱えて、片手にはお茶と菓子とを持って、ここへ入って来ました。
「おじさん、お茶をおあがりなさい」
「はい、どうも有難う」
この子供はお茶を注いで、七兵衛にすすめたが、そのまま出て行かないで、お客様の傍へきちんとかしこまり、例の般若の面は後生大事にして、そうして、七兵衛に馴々《なれなれ》しく話しかけるのです。
「おじさん、お前どこから来たの?」
「え、私は遠いところから来ましたよ」
「遠いところってどこ?」
「向うの方のお山ですよ」
「向うのお山? では甲州上野原?」
と言われて七兵衛がギョッとして、思わずこの少年の顔を見直し、
「上野原とは違いますけれど、坊ちゃん、あっちの方を知ってますか」
「ああ、あたい、甲州の上野原の月見寺にいたことがあるのよ」
「ああ、そうですか、おじさんのところは上野原より少し近いけれども、やっぱり山ですよ」
「何というところなの」
「青梅というところですよ」
「青梅? 大きな眼があるの?」
「そういうわけじゃありませんよ、
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