遠からぬ物置で、泣きわめく声。泣き疲れたのか、一時は低くすすり泣きのようにまで落ちていたのが、この一同が食卓を開くとじきに、またすばらしい声で号泣をはじめました。
駒井は苦《にが》い面《かお》をする。
茂太郎と、もゆる子とは面を見合わせて、くすぐったい思い入れ。
金椎には聞えないから、平々淡々。
食卓の調子の変ったので戸惑いをさせられた七兵衛は、この号泣でまた驚かされてしまいました。
それでも誰ひとり、号泣者を顧みようとする者はなく、食事は頓着なしに進んで行く――
六十四
駒井から船を見せられた七兵衛は、その時全く別な世界があることを教えられました。
別な世界というのは、自分が今まで、跼蹐《きょくせき》していた天地のほかに、別に自由自在な天地のあるのを、自分は気がつかなかったということです。
今までの自分の生涯が、土の上を走っていたから、行詰りが出来る、そのとどのつまりの行詰りは、もう極まった運命のほかに何物も無いと観念をしておりましたのに、ここには全く自分の能力を不用として、生きて行ける生涯があるということを知りました。
この船というものに自分
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