こで船を製造しているのだ」
「船をおこしらえになっておいででございますか」
「うむ、その船も近々出来上るから、それで外国へ乗出してみようと思っている」
「それは大仕事でございますね、外国とおっしゃるのは、ドチラでございますか」
「外国……とだけでは、さっぱり当りがつくまいが、実はこっちにもまだ行先の当てはついていないのだが、まあ、伊豆の小笠原島よりは、もっと遠い、呂宋《ルソン》とか、高砂《たかさご》とかいうところ、或いはもっと、ずっとのして、亜米利加《アメリカ》方面まで行くかも知れぬ」
「それはそれは、たまげたおもくろみでございます、左様な遠方へお越しになるお船は、さだめしめざましいことでございましょう」
そこへ、また給仕役の金椎《キンツイ》が来て挨拶しましたから、駒井が、
「ちょうど、食事時だ、これから食堂へ行って、食事を済ましてから造船所へ案内いたそう」
と言って、自分が先に立ちましたから、七兵衛はそのあとに従います。
例の食堂に、今日は七兵衛という珍客を一人加えて、七兵衛が、全く勝手が違って戸惑いをするほどの変った形式で、食事を進めていると、さきほどから気がかりになるのは、程
前へ
次へ
全514ページ中482ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング