町で泊って、翌日はもう洲崎着。
 駒井の陣屋をたずねると、直ぐにわかる。来意を告げると直ちに会える。
 七兵衛は、そこで、はじめて駒井甚三郎に対面の挨拶をしました。
 世が世ならば、土下座をしても、対談はかなうまじきはずなのを、無雑作《むぞうさ》にその室に通されて、向き直って椅子に腰をかけさせられて、七兵衛がこそばゆい心地。
 椅子なんぞに腰を下ろしたことはないのに、こういった人品と当面して、会話を取りかわすなんぞということは、今までに経験のないことでした。
 それは神尾主膳のような人には、ずいぶん勝手な立居振舞をしたりしてもいいように出来ているが、この人との対面は、調子の違うこと夥《おびただ》しいと、さすがの七兵衛の腰がきまらないようです。
 そうして、せっかく、近くすすめてくれた椅子を、わざと自分でしりぞけて、絨氈《じゅうたん》のようなものが敷いてある板の間へかしこまってしまいました。
「それは、いけません、おかけなさい、こういう室では、腰をかけて話さないと、かえって失礼に当るものです」
 駒井から説かれて、七兵衛がおそるおそる、また椅子に取りついて、それを与えられた距離よりは、ず
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