さんがしきりに、房州へ行きたがっているという話を聞きましたが――そこで、なんなら、わしが代ってその房州とやらまで行って上げてもいいと、そんなことを、ふと思いついたものだから、今日は久しぶりで訪ねて来てみる気になったのだよ」
「ああ、それはようございました、なるほど、おじさんならば……ほんとうに、房州までお使をお頼み申したいことでございます」
「おやすい御用だね」
「房州といえば、ずいぶん遠いところでしょうが、与八さんでは日数がかかるし、それに与八さんは、ここをはなせない人になっているし、あのムク犬は怜悧《りこう》な犬ですから、ひとりでやれば行きますけれど、犬のことだから、用の足りないこともあるし、道中が心配になります、それで、どうしようかと、毎日考えていました。おじさん、あなたが行って下されば、願ったりかなったりです」
「そんなことは全くおやすい御用だ――房州は何というところだね」
「洲崎《すのさき》というところでございます」
「洲崎――あんまり聞いたことのねえ名だが、なあに、たずねれば直ぐわかるだろう」
「江戸の霊岸島から、船で行くといいそうでございます」
「船はいけないね、千葉の方
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