しまって、ああ取返しがつかねえ……とこう思った時は後の祭りだ」
「ホ、ホ、ホ、何ですおじさん、人様から頼まれて、そんなに大仰に悔《くや》まないでもいいじゃありませんか」
「ハ、ハ、ハ、頼まれたことを悔むわけじゃねえが、ちっと進み過ぎて、もう今じゃ後戻りができず……お笑い草だねえ」
「いいえ、そんなことはありません。おじさんは、わたしを背負って山を下る時なんぞは、ずいぶんお足が早うございましたが、里へ出ると、あたりまえになってしまいますね、おじさんの足の早いことなぞは、青梅あたりにも知っている人は一人もないようですね、わたしだけが、それを知っているような気持がします」
「頭がいいのなら名誉にもなりますがね、手の長いのや、足の早いのは、あんまり自慢にはなりませんからね」
「ホ、ホ、ホ、手の長いのは自慢にはなりませんけれど、足の早いのは結構じゃありませんか、わたしなんぞも、こうして今では不自由なく、この地に根が生えたようなものですけれども、それでも、おじさんのように足が早ければ、行ってみたいと思うところがいくらもありますけれど、女の足では仕方がありません」
「その事、昨日、与八さんから、お松
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