くはない。ただ、その犬の真黒くして、大きなことが目に立つ。
七兵衛は、その犬の近づいて来るのを無心に注意している。
やがて、その犬の後ろから、多数の犬が現われたのを見る。
五頭、六頭、十頭、あんまり数が多いものだから、少しく異様の目を以て見る。
犬は見えたが猟師は見えない、犬の飼主というものも見えない。
黒い大きな犬が、七兵衛の方へと、おもむろに歩んで来る。群犬がそれに従うもののように、周囲から群れて来る。
黒い大きい犬が、七兵衛の真向いに来て、はたと歩みをとどめて、七兵衛の面《かお》を見る。
七兵衛もその犬を見る――両個が面を見合わせる。犬はそれより以上に進まない。七兵衛は、はて見たような犬だと思う。
「あ!」
七兵衛が思わず立ち上る。
犬が一声高く吠える。
だが、その吠える声になんらの険難《けんのん》はありませんでした。それは自他の警戒のために吠ゆるのではなく、むしろ驚異のために吠えたようなものです――
一声吠えただけで犬は、七兵衛の面をつくづくと見ている。
「あ!」
七兵衛の方で狼狽《ろうばい》する。
彼は当然、この犬が自分に向って、のしかかって来るもの
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