のように警戒する。
だが、犬は動かない――
知る人は知ろう、この犬は間《あい》の山《やま》以来、七兵衛を見れば必ず吠えた犬です。吠えて飛びかかった犬です――飛びかかって、骨を食わなければやむまいとした犬です。その都度都度、七兵衛なればこそこの犬の鋭鋒を外《はず》して来たもので――外しは外したが、それはほとんど命がけでありました。
恐るべきものを恐れない七兵衛は、この犬をこそ最も恐れておりました。
今や、また、ここでこの強敵に出会《でくわ》した。これを外すは、木に登って避けるよりほかはないと思いました。
ところが、今日はその呼吸が少し違う。前いったように、戦意を示す吠え方でなくて、この山中、思わぬ人に出会したという驚異の吠え方であって、それのみか、一声吠えた後の犬の挙動が全然違います。
第一、あの眼の色が違います――殺気がありません、敵意がありません――無論多少の警戒はありますが、その警戒のうちに、充分和気の存することを七兵衛が見て取りました。犬が折れたのではない、こちらの疑いが晴れたのだという感じ……
こうして、犬と人とが睨《にら》み合うこと多時――その間、群犬は、林の中
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