であったであったかどうか、それを道庵先生が引張り出した脱線ぶりには、誰あって驚倒しないものはないはずです。
 それにつづいて、名古屋の筍連《たけのこれん》にも思いきった八ツ当りを浴びせ、医学館の薬品会をコキおろし、伊藤|玄沢《げんたく》の施薬をおひゃらかし、三臓円や、小見山宗法が店をひやかし、ういろう、きしめん、名古屋女とお市の方、梨瓜と大根、名古屋の長焼、瀬戸物、風呂吹き、漬物の味――宗春の発明したというナモ、キャモ、オキャアセ言葉――当るを幸いに、批評毒舌、時にはやや如才ないことを言ってみたりして、十二分の有頂天《うちょうてん》で、その席を送り出されて来ました。
 そうして、伝馬会所の札の辻のところまでやって来た時、不意に道庵先生の後ろから水をブッかけたものがありました。
「あっ!」
と腰を抜かして、道庵が振りむくところ、また一杯、今度はその左の方から物をも言わず、手桶に一ぱいアビせかけた者があります。
「あっ!」
と左を見返す時に、今度は右の方から、思いきって冷たい一杯の手桶の水を、ブッかけた者があります。
 見るも無惨に道庵の腰が抜けて、仰天しているところで、真向《まっこう》か
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