》めている男では無《ね》え、むしろ漢詩の形を仮りて日本を歌ったものだ、彼に於て、はじめて醇乎《じゅんこ》たる日本詩人を見るのだ、意気と、声調を以て日本を歌ったものに、古来、彼以上のものがあるか、なんぞと言い出したので、人々を呆気《あっけ》に取らせました。
思う存分に、山陽を下げたり上げたりしてからに、
「まあ、そいったようなわけだが、人物としては山陽なんぞはごくお粗末なものさ、いわば一種のおっちょこちょいさ。わしも若い時分に、ちょいちょいあの男とは逢ったものだがね(註に曰《いわ》く、少々怪しいものだ)人物は、からっきし、おっちょこちょいで、大塩平八郎や、渡辺崋山あたりとも段違いさ。平八郎も、崋山も、みんな煙草をのみ合った仲間だがね(註、こいつも怪しい)大塩は何といったってお前、豪傑の面影はあるさ。崋山もお前、どこへ出したって士大夫の貫禄は確かなものだ。そこへ行くと山陽なんぞは、せいぜい足軽組の五人頭だね」
その露骨さ加減に、また一座が白け渡ったとする。それを委細かまわず道庵が、古今の詩を論じ去り、論じ来《きた》って、星巌、湖山、春濤まではまあいいとして、
「君たちは、山陽なんぞを問
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